かわいいの呪い

昨日、ピンクのセーターを着てピンクのスカートを履き、ピンクのトートバッグを持っていた。こんなにピンクのものに囲まれていることがおかしかったので、私が抱えていた呪いについて書いてみる。

 

私は自己肯定をするのが苦手な女なので、20代に入るまでピンクの持ち物を自分で選ぶことはなかった。

ブスでバカで怠惰が好きな、自分に自信がない私は、思春期に入る頃にはそれがすでに苦手になっていたと思う。ピンクはかわいい女の子のものだ。

そんな私が唯一ピンク担当になることがあって、それは三兄弟の末っ子、二人の兄を持つ妹としての私だった。歯ブラシやタオルなど、色分けされるものはピンクや赤が多かった。長男は青、次男は黄色や緑だ。しかし母が選んでくれる服にピンクのものはあまりなく、私のもやもやを理解していてくれたのだと思う。

家には恐竜柄のスプーンとチューリップ柄のスプーンがあり、花という[かわいい]属性のものが嫌で2本しかない恐竜柄のスプーンを兄と取り合った。昔のような執着はないものの、今でもスプーンを手に取るときはそれが恐竜かチューリップか確認してしまう。

ピンクだけじゃなく、花などの[かわいい]ものが苦手で、かわいくない私に相応しいと思えなかった。かわいいものを身につけることも愛でることも求めることもできなかった。「かわいい〜」って言葉も自分が使ってはいけないような気がしたのであまり使わないようにしていた。

そんなかわいいの呪いがいつの間に溶けていたのかはわからない。しかし今では「かわいい〜」を言えるようになったし、かわいいものを手に入れることもあるし、かわいくはなれないけれど、かわいいに憧れを抱くこともできる。

未だにピンクと水色が並んでいると水色を選ぶことは多いけれど、それは呪いなんかじゃなくてきっとちゃんと選んでいるのだと思う。